Craftsman Interview #2

お客様が望んでいる“以上”のものを

永田みどり

干支の原点は餃子?!

─────永田さんといえば、毎年「干支」の置物が大人気です。
干支の製作について振り返っていただけますか?

きっかけは(主宰している)陶芸教室で生徒さんに作ってもらう題材として作り始めました。
餃子の皮みたいに粘土をくるっと閉じて中に空洞を作って、パーツをつけて。
これに足をつけたら戌や丑になり、立てて耳をつけたらネズミ や(お月見兎香炉の)兎になります。これが干支の作り方の原点なんです。

▼お月見兎の製作を実演していただきました。

1. 基本となる粘土を整形する

2. 餃子の皮のようにくるんでボディを作る

3. 型紙(オレンジ色)で耳の形を切り出し、ボディ(手前右)につける


─────干支の原点が餃子だったとは(笑)。

その年の干支を作っているうちに、この基本形をこうしたらこうなるな、という新たなアイデアが出てきて、それが次の年に繋がって、また次の年へ…というふうに続いて今に至っています。

─────10年前から永田さんらしさというか、作風自体にはあまり変化がないですね。

そうですね。自分が可愛いな、と思ったものを作るとこうなっちゃうというか。自分の手を通すとなんとなくそうなっちゃうのかな。

今までの干支を振り返ると、一番難しかったのは「白龍」ですね。顔を一個一個作らないといけないから。
(予約販売時の)写真映りがよかった分、写真のほうがいいと思われたら…という不安もありました。

大迫力の「白龍」はまさに渾身の作


─────いやぁ、どれも素晴らしい出来でしたよ。
今までカワイイ路線で来たから「辰年はどうなるんだろう?」と見当もつかなかったのですが、焼く前の試作写真を見せてもらって「これはいける!」と確信しました。そして、白く焼きあがった姿を見たらますますかっこよくて、私自身感動しました。

「白龍」は難しかったですけど作っていて楽しかったです。あの時点での自分として一番いいものが出せたように思います。
干支で一番泣いたのは「子(ネズミ)」ですね。
自分の手間ひまを考慮するよりも、「何匹もいたほうがカワイイ」という思いが勝ってしまい、4匹セットにしちゃったけど、作ってみたら本当に大変で、いつまでたっても終わらない…。
ああいうセットもののサービスはもうないかな(笑)。

 

─────今年の「巳」の模様もすごかったですね。あの手法を思いついたところがまたすごいな、と。

カワイイけれど、永田さんを泣かせた「ネズミ4匹組」


以前、生徒さんが亀を作るときにオクラのネットで頭の部分の模様をつけたんです。オクラのネットだと粗いので、それをヒントに洗濯ネットを使うことを思いつきました。100円ショップでいろんな洗濯ネットを物色して(笑)。
この模様は化粧で3、4回白く塗ってから、最後にもう一度洗濯ネットを被せて化粧を塗りました。ネットも一回じゃキレイに被せられないので数回に分けて…案外手間が掛かりましたね。

ヘビのうろこ模様は洗濯ネットで。


─────そんな手間がかかってたとは。「巳」は当初の予定になかった水引が最後に加わって、それがまたよかったです。さて、次は「午」ですね。

実は私が一番好きな動物は「馬」なんです。小さい頃から馬の絵はしょっちゅう描いてたし、おじいちゃんと一緒に競馬中継を見て(笑)、馬の足の運びとか、関節はこうなってるんだ、とか…ちょっとマニアックに見てました。なので、「とうとう馬が作れる時が来た!」と今年は楽しみなんです。
ただ、足が問題。馬はやはり足が魅力的じゃないですか。そこをどう作るか。足を細く作ると破損の危険性も大きいし、梱包も難しい。
見ててほっこりするかわいい路線で行くか、神馬みたいな凛とした姿の美しい馬にするか、それともシンプルな民芸調のようなものにするか、などなど考えだすとアイデアがあれこれ浮かんできちゃって…。
毎年、干支の置物はものすごく考えますね。いつも購入してくださっているお客様も多いので「ああ、今年はこうなっちゃったのか」とがっかりされたくないですから。
その時の自分が持っているものをフルに絞り出します。前の年には思いつかなかったものが経験の積み重ねで次の年には出せるようになり、またその次の年にはよりいいものを…というふうに年々グレードアップしていけたら、と思っています。

─────それは私が見ていても感じます。「おっ、今年はこう来たか!」みたいな嬉しい驚きが毎回ありますよ。