和雑貨翠 作り手インタビュー

Craftsman Interview #3
365日、革に夢中!
加藤 キナ
革作家“加藤キナ”さんは夫婦二人組のユニット。工房にお邪魔して、牧さん(キ)、なほさん(ナ)のお二人にお話をうかがいました。
ゼロから始めた鞄づくり
─────“加藤キナ”というユニットでの活動を始めたのはいつ頃ですか?
ナ) 京都から長野に移ってからなので、だいたい11年くらい前です。
─────なほさんは京都で織物の学校に行かれたそうですね。当時は染織の道に進むつもりだったのですか?
ナ) うまれが飯田紬の産地(長野)だったので着尺を学んでいましたが、学校が染色・糸紡ぎなどひととおり教えて下さるところだったこともあって、あれこれ揺れ動いていました。 ただ、その頃から一貫してあったのは「使えるものを作りたい」ということ。それで最終的に日常に使える鞄づくりに行き着きました。
─────二人で製作を始めたいきさつは?
ナ) 卒業後一年くらいは私一人で活動していたのですが、絹を鞄に仕立てるときにどうしても布の弱さが気になって…。当時、牧さんは自分のものを革でコツコツ作っていて、革が身近にありました。そこで、「革で鞄のサイドとか擦れる部分を補強してみよう」と布に革を組み合わせるようになったんです。これがユニットとしての一番初めのスタイルになりました。

牧さん(キ)。
手前にあるのは人気のショルダー。定番になった今でもまだ改良できる方法を見つけた、と嬉しそうにおっしゃっていました。

なほさん(ナ)。
染織のほかに陶芸もされていたそうです。革作家に至るまでのたくさんの経験が今に生かされています。
─────牧さんはどこかで革を学ばれたのですか?
ナ) この人は学校があまり好きではないんです。だから、全くの独学。誰かの色に染まりたくないんだよね。
キ) 何を人から学べばいいかがまずわからない。それに、人から習うと間違える機会がない。簡単に得られた答しか知らないと後から困ることがあるんです。最初に間違っておけばそれが経験として生きてくる。
ナ) 誰かに教えてもらえば一番の近道がわかるけれども、彼は時間はかかっても自分一人で答を出せる人なんです。だから誰のものとも違う独特のものが作り出せる。
キ) 何を人から学べばいいかがまずわからない。それに、人から習うと間違える機会がない。簡単に得られた答しか知らないと後から困ることがあるんです。最初に間違っておけばそれが経験として生きてくる。
ナ) 誰かに教えてもらえば一番の近道がわかるけれども、彼は時間はかかっても自分一人で答を出せる人なんです。だから誰のものとも違う独特のものが作り出せる。
─────なるほど。独特のものといえば、ショルダーバッグでは身体に当たる面と外側の面のラインのカーブを微妙に変えていましたね。
ナ) あれも独学だからありえたんじゃないかな。いろいろ試行錯誤してますね。
キ) 少しずつ改良に改良を重ねて。で、「前のほうが良かったな」と失敗することもある(笑)。いつも作りながら、ここはこうしたらもっとよくなるんじゃないかって考えています。
キ) 少しずつ改良に改良を重ねて。で、「前のほうが良かったな」と失敗することもある(笑)。いつも作りながら、ここはこうしたらもっとよくなるんじゃないかって考えています。

工房には様々な色の革がありました。こちらはイタリア製の羊革。

紡ぎ車。糸を紡ぐところから製作が始まる鞄もあります。
─────常に進化しようとしている姿勢がすごいですね。
八ヶ岳のクラフトフェアで最初お二人に会った時、パーツまで自分たちで作っている、ということにも驚きました。
ナ) たぶん先生がいたら、素材やパーツについてもいろいろアドバイスをもらえたと思うのですが、全くのゼロから始めたから、「欲しい…でも、ない」イコール「作る」になっていました(笑)
─────わぁ、すごいプリミティブ! 私はあえて自分たちで作っていたのかと思ってたけれど、実は必要に迫られて作っていたんですね。
ナ) 革にしろ金具にしろ、今になってやっと信頼できるお店や人との出会いがあって。そこでいろいろ教えてもらえるようになりました。だから今はすごく楽しいです。昔は何を質問すればいいかもわからなかった。